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premiere長GOPH.264H.265コーデック動作改善

長GOPコーデックがPremiere Proを重くする理由と対処法

H.264・H.265・AVCHDなど長GOP圧縮コーデックがPremiere Proのスクラブ・再生を重くする仕組みと、軽くするための選択肢を解説。

更新: 2026/2/257分で読める

タイムライン上でクリップを前後にドラッグしたとき(スクラブ)に特にカクつきが出る場合、原因はほぼ間違いなく長GOP構造のコーデックにあります。H.264・H.265・AVCHDはいずれも長GOPを採用しており、この特性を理解することで適切な対処法を選べます。

原因の構造分解

CPU: 長GOPのフレーム参照処理がスクラブに不向き

長GOPとはGroup of Pictures(フレームグループ)の単位を長く取る圧縮方式です。具体的には、完全な映像データを持つIフレーム(キーフレーム)を数十フレームごとに1枚配置し、その間のフレームには前後のフレームとの差分のみを記録します。Pフレーム(前方向参照)とBフレーム(双方向参照)がこれに当たります。

タイムライン上の任意の位置に移動するとき、CPUはそのフレームより前にある最も近いIフレームを探し、そこからPフレーム・Bフレームを順に計算しながら目的のフレームに到達します。この処理がスクラブのたびに発生するため、H.264・H.265素材でのスクラブは再生より重くなる傾向があります。

GPU: ハードウェアデコードで改善できる場合とそうでない場合

NVIDIAやAMDのGPUには専用のビデオデコードエンジン(NVDECやVCN)が搭載されており、H.264・H.265のハードウェアデコードに対応しています。これを有効にすることで、長GOPのデコード処理の一部がGPUにオフロードされ、CPUの負荷が下がります。ただし、スクラブ時の参照フレーム計算の性質上、4K H.265の高ビットレート素材では完全には解消しないケースもあります。

RAM: 参照フレームのバッファ消費

長GOP方式では複数のフレームを同時にRAMに保持しながらデコードします。GOPサイズが大きいほど(例えばGOPサイズ250などの設定)、バッファに必要なRAM量が増えます。RAM 16GB未満の環境では、複数の長GOP素材を並行してデコードする際にメモリが圧迫される場合があります。

SSD: ランダムアクセスが必要になる

スクラブは連続再生ではなく特定フレームへのランダムジャンプです。長GOPでは参照元のIフレームを読み込む必要があるため、SSDのランダム読み込み速度(IOPS)が影響します。HDDはランダムアクセスが特に遅く、スクラブのレスポンスが悪化する主因になります。

設定: プレビューファイルが未生成でリアルタイムデコードに依存している

Premiere Proのプレビューファイル(.mpeg形式)を生成しておくと、タイムライン上の一部の区間を再エンコード済みファイルで再生できるため、長GOPのデコード負荷を回避できます。プレビューファイルが生成されていない区間(タイムライン上のバー色が赤・黄の区間)はリアルタイムデコードに依存します。

解決手順

  1. ハードウェアデコードを有効にする(まず最初に確認) 「編集」→「環境設定」→「メディア」→「ハードウェアアクセラレーテッドデコードを有効にする」にチェックを入れます。対応GPUを使用している場合、長GOPのデコード負荷が下がる可能性があります。

  2. プレビュー解像度を1/2に下げる プログラムモニター右下のドロップダウンを「1/2」に変更します。デコードするピクセル数が1/4になるため、長GOPのデコード計算量も下がり再生安定性が向上する場合があります。

  3. プレビューファイルをレンダリングする タイムラインで編集が完了した区間を選択し、「シーケンス」→「イン点からアウト点をレンダリング」(Enterキー)を実行します。バーが緑になった区間はプレビューファイルで再生され、長GOPのリアルタイムデコードが不要になります。

  4. プロキシを生成して長GOPを回避する プロキシを全Iフレームコーデック(GoPro CineForm)または低解像度H.264で生成すると、スクラブ時の参照フレーム問題を根本から回避できます。プロジェクトパネルで素材を選択し、右クリック→「プロキシ」→「プロキシを作成」→「GoPro CineForm 1080p」を選択します。CineFormは全Iフレームのため、スクラブ時の計算コストが大幅に下がります。

  5. GoPro CineFormまたはDNxHDへ変換する プロキシではなく素材自体を変換する場合は、Adobe Media Encoderで形式「GoPro CineForm」または「MXF OP1a」→プリセット「DNxHD 115」などを選択して変換します。全Iフレームコーデックに変換することで、スクラブ時の参照フレーム問題がなくなります。

  6. 書き出しはH.264で行い、作業ファイルは分離して管理する 変換後のCineForm・DNxHD素材はサイズが大きくなるため、作業用ドライブと保存用ドライブを分けて管理することを推奨します。NVMe SSDを作業用に、大容量HDDを長期保存用に割り当てる構成が現実的です。

判断基準

条件推奨アクション
スクラブが重いがGPUアクセラレーション有効・プレビュー1/2設定済みプロキシ(CineForm)生成で根本解決を目指す
ハードウェアデコード未設定のRTX 20シリーズ以降のGPU使用ハードウェアデコード有効化で改善する可能性が高い
GTX 10シリーズ以前のGPUでH.265素材が重いGPUのHEVCデコード対応が限定的。プロキシ生成が必須
RAM 16GB未満でH.264 4K素材を複数トラック使用RAM 32GBへの増設またはプロキシが必要な可能性が高い
初心者PCで動画編集を始めたい(初心者向けおすすめPC検討中)最初からプロキシワークフローを習慣にすると後から楽

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