Premiere ProでH.264やH.265の書き出し中にアプリがクラッシュする問題は、原因が複数にわたるため1つの対処で解決しないことが多い。GPU過熱・VRAMオーバー・ドライバーの問題・素材の破損など、各要因を順番に切り分けていく必要がある。この記事では、クラッシュが起きた際の確認手順と、それぞれに対応した対処法を解説する。
原因の構造分解
GPU過熱によるサーマルスロットリングとシャットダウン
4K書き出しはGPUに継続的な高負荷をかけるため、冷却が不十分な環境ではGPU温度が90℃以上に達し、保護回路が作動してクラッシュが起きる場合がある。デスクトップPCではGPUクーラーのホコリ詰まり、ノートPCでは通気口の塞がりが主な原因になることがある。
VRAMの使用量がGPUの最大容量を超える
書き出し処理は編集時よりVRAMを多く使用する場合がある。特に4K以上の素材に複数のエフェクトを重ねた場合、8GB VRAMのGPUでは処理中にVRAMが枯渇し、アクセス違反によるクラッシュが起きることがある。
コーデック・ドライバーの問題
NVIDIAのGame Ready Driverに更新した直後や、Premiere Proのバージョンアップ直後に書き出しクラッシュが発生するケースが報告されている。GPU側のH.264/H.265エンコーダーとPremiere Proのインターフェースに互換性の問題が生じている可能性がある。
プロジェクト内の特定の素材・エフェクトの問題
書き出しが常に同じタイムコードで止まる場合、その時点の素材ファイルに問題がある可能性がある。リンク切れのメディア・破損したクリップ・互換性の低いプラグインが書き出し処理を中断させることがある。
システムメモリ(RAM)不足
書き出し処理はRAMも大量に消費する。16GB RAMで4K長尺の書き出しを行う場合、RAMが枯渇してクラッシュが起きることがある。
解決手順
クラッシュ前に確認すべきこと
- MSI Afterburner(無料)またはHWiNFO(無料)でGPU温度をモニタリングしながら書き出しを開始する
- GPU温度が85℃以上に達している場合、過熱が原因の可能性が高い
- タスクマネージャーで「専用GPUメモリ」がGPUの最大容量に近づいていないか確認する
- タスクマネージャーで「コミット済みメモリ」がRAM容量を超えていないか確認する
GPU過熱への対処
- PCケースやノートPCの通気口を確認し、ホコリが溜まっていれば除去する
- デスクトップPCの場合、GPUクーラーのファンが正常に動作しているか確認する
- Premiere Proの「編集」→「環境設定」→「メディア」で、書き出し中のプレビュー描画を抑制する設定を確認する
- 冷却が根本的に不足している場合は、冷却システムの改善方法を参照する
VRAMオーバーへの対処
- 書き出し前に不要なアプリをすべて閉じる
- Premiere Proで使用していないシーケンスのパネルを閉じる
- 書き出し設定を「ソフトウェアエンコーディング」に変更してVRAM消費を下げる
- 改善しない場合、ビットレートを下げて処理量を削減する
ソフトウェアエンコードへの切り替え
ハードウェアエンコードが原因の場合、ソフトウェアエンコードに切り替えることで書き出しが完走する可能性がある。
- 「ファイル」→「書き出し」→「メディア」を開く
- 「ビデオ」タブの「パフォーマンス」セクションで「ハードウェアエンコーディング」のチェックを外す
- 「エンコーダー」が「ソフトウェア」になっていることを確認して書き出しを実行する
書き出し時間は長くなるが、クラッシュが回避できる可能性が高い。
Adobe Media Encoderへの迂回
Premiere Pro本体での書き出しでクラッシュする場合、Adobe Media Encoderにキューイングすることでプロセスを分離し、安定性が改善することがある。
- 「ファイル」→「書き出し」→「メディア」を開く
- 書き出し設定を完了後、「キュー」をクリックする(「書き出し」ではなく)
- Adobe Media Encoderが自動で起動し、キューに追加される
- Media Encoder側でエンコードを開始する
特定タイムコードでのクラッシュへの対処
- クラッシュが起きるタイムコードの直前のクリップをプロジェクトパネルで確認する
- そのクリップを別の素材で差し替えて書き出しを試みる
- Lumetriカラーなどのエフェクトを一時的にオフにして書き出しを試みる
- 問題のあるクリップを特定後、再インポートまたはトランスコードで置き換える
判断基準
| 条件 | 推奨アクション |
|---|---|
| GPU温度が85℃以上でクラッシュ | 冷却改善を優先。ホコリ除去・冷却システム強化 |
| VRAM使用量が最大容量付近でクラッシュ | ソフトウェアエンコードに切り替え・不要アプリを閉じる |
| 毎回同じタイムコードでクラッシュ | 該当クリップの確認・再インポート・差し替え |
| GRDへの更新後からクラッシュが始まった | Studio Driverへのロールバックを試みる |
| Premiere Proのみでクラッシュ・MEでは成功 | Premiere Pro本体の設定またはプロジェクトファイルの問題 |
| RAM 16GB以下で長尺4Kクラッシュ | RAMを32GBに増設することを検討 |